暁に消え逝く星
「はぁ?」
今度は、アウレシアのほうが納得のいかない顔をした。
今度は何を言い出すのだ、この天然皇子は。
「私は腰抜けなどという言葉を取り消せと言ったのではない」
予想と違う言葉に、アウレシアは戸惑う。
「――じゃあ、あたしが言ったどの部分を取り消せばいいのさ?」
腰抜け以外、イルグレンを怒らせることを言ったのか、アウレシアには全く思い出せなかった。
だが、覚えていないアウレシアに、イルグレンはさらに気分を害したようだった。
「お前は、私の国の民を侮辱したのだ。死んだほうがいいと言った。
そのような暴言を忘れるとは何事だ。
私の国は別に男尊女卑の国ではないし、民もそのような考えを持っているわけではない。
国が滅びようと、そこにいる民は滅んでいい訳ではない。罪のない民が、死んでいい訳がない」
その言葉の意味をアウレシアが理解するまで、数秒を要した。
どうやら、自分自身のことでなくて、国の民を侮辱したことを怒っていたのだと、ようやく思い至った。
同時に、脱力する。
「怒りどころはそこなのかよ…」