暁に消え逝く星
「そこ以外のところなどどうでもいい。死んでもいい人間などいない。悪人なら別だが」
真摯に見つめられ、アウレシアは居心地が悪かった。
どうもこの皇子の世間ずれは、相当のものだ。
今までに見たことがない。
何やらこちらが悪者のような気分にさせられる。
「――まあ、悪かったよ。あんたの国の人間を侮辱したこと。失礼なことを言ったことを取り消す」
そう言った途端、イルグレンは本当に嬉しそうに微笑んだ。
胸のつかえが取れたようにすっきりとした顔だった。
「私も悪かった。お前を侮辱するつもりはなかったのだ。女に護衛がつとまるかと聞いたのは、ただ、不思議だったからだ。私の国には戦う女はいない。国では、女の戦士を見たこともない。女というのは私達にとっては守るべきものであって、決してともに戦うべき者ではなかったのだ」
「――」
その言葉には、アウレシアは唖然とするしかなかった。
あの発言は、侮辱ではなく、純粋な好奇心から出たものだったのか。
なんと紛らわしい。
「あたしは――てっきりいつもみたいに女だからって舐められてんのかと思ったのさ」
イルグレンが眉根を寄せる。
「舐めるというのは、馬鹿にするということか? 女を馬鹿にするなど、許されん。守らねばならぬ対象であるのに。お前はそのように扱われるのか?」
肩を竦めて、アウレシアは答える。
「女戦士は少ないからね。まあ、時々は」
「けしからん。お前は戦士としては一流であろう。腕も立つし、それなのに軽んじられるとは――なんという見る目のない男達だ!!」
本気で憤慨する皇子に、アウレシアはあっけに取られた。