暁に消え逝く星
かまどの傍から少し離れたところにある先ほどの敷物に座るように促され、イルグレンは大人しく座る。
「レシアに勝ったんだって? おめでとうよ。ほら」
湯気の立つ熱々のスープの入った器を渡されて、イルグレンは戸惑ったようにアルライカとアウレシアを交互に見た。
「私が、一番最初に食べるのか?」
「そうさ、熱いから舌を火傷しないようにな。パンをつけて食べてもうまいぞ。もうすぐ焼きあがるから先に食えよ」
恐る恐る器のなかの木匙をとり、湯気の立つ具沢山の汁をすくってぎこちなく息を吹きかける。
そして、ゆっくりと口に入れた。
「どうだ、うまいだろ」
「…うまい」
まじまじと器のスープを見ているイルグレンに、満足したようにアルライカは頷いた。
「だろ。この鳥の出汁がいいんだよなあ。ソイエの焼くパンとまた合うんだ。ソイエの腕にゃ脱帽だな。俺が焼いてもこうはならん」
「お前のは練りが足りないからだ。スープの出汁をとるためなら丁寧に骨を砕くくせに、なぜ生地を練るときは丁寧にできないんだ」
呆れたように言いながら、ソイエライアは焼きたての平べったいパンを入れた籠をイルグレンに差し出す。
「食べな、グレン。こっちも焼き立てだからうまいぞ。最初は何もつけずに食べてみろ」
言われたとおり、熱々のパンをちぎり、口に入れる。ほのかな塩味が効いたパンの、外側のさっくりとした噛み応え、中のもっちりとした食感に、イルグレンは目を丸くした。
「こんなにうまいものを食べたことがない――」
「お世辞にしちゃ大げさだが、ありがとうよ。スープにもつけて食べてみな」