暁に消え逝く星

「何だよ、食べたことないみたいな言い草じゃん」
「食べたことがない」
「へ? 何で?」
「念入りに毒見が行われるので、私が食べるころには、全て冷めている」
「――」
 これには、アウレシアだけでなく、アルライカもソイエライアも絶句した。
「みんなで同じものを食べるというのは、いいことだ。毒見の心配も要らないし、温かい食べ物がすぐに食べられる」
「なんで、そんな――毒見なんて必要なんだよ。あんた皇子様だろ」
「私は、側室の子だ。母は貴族ではない。身分の低い踊り子だった。それなのに長子では、皇后には目障りだったのだろう。皇位を継ぐわけでもないのに、一番最初に生まれてしまったのが運の尽きだった。皇族に刃を向けるのは不敬に当たるから、毒が一番簡単だったのだろう」
 何気なく言われた生い立ちだが、とてつもなく重かった。
 そうだ。イルグレンのイルとは、〈最初の子〉という意味なのだ。
 二番目の子はアル、三番目の子はソルがつく。
 本来ならば、皇太子になっているはずの皇子は、その母親の血筋ゆえに決してそうなることはなかったのだ。
 なんという不安定な身分。
 命を狙われ続けて育ち、そうして、追われるように国を出され、もう戻る故郷とてない。
 アウレシア達は、何だかこの皇子がとてつもなく可哀想な気がしてきた。


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