暁に消え逝く星

 二週間も剣の稽古をつけていたのに、会話らしい会話を今日まで全くしてこなかった自分を、アウレシアは悔やんだ。
 毎日命を狙われながら生きるなど、世を拗ねて捻くれてもおかしくないのに、あんなに素直で真っ当に育つとは、ある意味只者ではない。
 母親は、よほど大切に育てたに違いない。
 その母親はどうしたのだろうとふと疑問が頭をかすめたが、当面の問題はそれではない。
「ただなぁ、グレンに飯の作り方教えるっていうライカには賛成できないけど…」
 ぼやくアウレシアに、アルライカが反論する。
「何でだよ。旅の間は自分のことは自分でできるようにしてやんないと。鍛えてくれっつったのは宰相様のほうだろ? サマルウェアに行ったら、二度とすることもないんだし、下々の暮らしや生活を体験しとくのも悪くないだろ。大体、あの皇子様のほうから言い出したんだ。あいつ、絶対変わってるぜ」
「変わってんのは、この二週間と今日一日で十分わかったさ。でも、皇子様によけいなこと教えてもどうかと思うし」
「いや――ライカの言うとおりだ」
それまで黙って食事をしながら話を聞いていたリュケイネイアスが、ようやく口を開いた。
「レシア、あの皇子様はなるべく俺らの近くにいさせろ。その方が守りやすい。やりたがってるなら飯でも何でも作らせとけ。自分で飯を作れば毒の入りようもないしな」
 最後の言葉に、三人は一様に顔色を変える。


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