暁に消え逝く星
「何だよ、それ。毒なんて」
「何かあったんだな、ケイ」
「何だよ、早く教えろよ」
残りのスープを飲み干して、リュケイネイアスは器を置いた。
「今日、皇子の食事に毒が盛られてた」
「何だって!?」
アウレシアが身を乗り出す。
アルライカとソイエライアもリュケイネイアスの近くに寄る。
「幸い死人は出なかったが、どこで紛れ込んだもんか見当がつかん。食料を調達した北の町が一番怪しいが、確かめに戻るわけにもいかんしな。この旅の一行の中に刺客がいるはずがないとエギル様は言うが。護衛が大勢いる以上、保証はない」
「あの侍女じゃないのかい?」
「あの娘は宰相が最も信頼する侍女だ。幼い頃から娘のように育ててきたから裏切るはずはない」
「じゃあ、あの護衛隊長か身代わりの護衛は?」
「護衛隊長も有り得ん。忠誠心は人一倍だからな。聖皇帝の護衛隊長でもあったんだ。身代わりの護衛は侍女の娘の許婚だ。毒見があの娘なのにそれも有り得ん。食事を作っているのもあの娘だから、真っ先に気づいたらしい。銀に反応する毒だったらしく、毒見する前に気づいたのは不幸中の幸いだった。それからは、侍女と一緒に食料を全部調べなおしたが、今日出された料理に使われた小麦の袋によく見ると穴が開いていたから、そこから毒を入れたってことしかわからなかった。小さな穴だから、買ったときにすでに入れられていたのか、旅の途中で誰かがやったのかもわからんのがやっかいだ」
「それであの娘、あたしらが戻ったときいなかったのかよ。いつもなら真っ先に出迎えにすっ飛んでくるのにおかしいと思ったんだ」