暁に消え逝く星

 自分のうかつさにとことん後悔する。
 あの場は、雰囲気に流されたというか、淋しそうな子供を慰めるというか、するのがお約束、みたいな状況だったので、アウレシアは正直なところ、そんなに深く考えてはいなかったのだ。
 意味があるかというと、ないような、あるような、アウレシア自身にも結局わかっていない。
 しかし、今まで付き合ってきた男達と、イルグレンは違うのを計算に入れていなかった。
 アウレシアの常識とはまったくもってかけ離れ過ぎている。

 天然皇子は、どこまでいっても天然だった。

 天然には、真面目に対抗しても無駄だ。
 ここは一つ――誤魔化すしかない。

「こ、この件は、ひとまずおいておこう」

 それが、アウレシアが今できる最善の逃げ口上だった。
「? おいておくとは?」
「ええっと――結局、気持ちに確信が持てないってことだろ? 確信が持てるまでは、そのことには触れないことにするんだよ。あたし達は、今まで通り楽しく旅をする。それで確信が持てたら、そのことについて話し合う」
「――何か、腑に落ちぬところもあるが、確信が持てたら、触れてもいいのか」
「ああ、そうしよう。だから、この件は、今日はここまで!」
「わかった」
 素直に頷く天然皇子をよそに、アウレシアはめちゃめちゃ疲れた。
 天然もここまでくると質が悪い。
 腑に落ちないのはこっちのほうだ。
 たかがあれだけで、これだけ真剣に考える羽目になるなんて。
 どんな箱入りだ。
 それ以上ことが進んでたら、どのような展開になるやら、恐ろしくて考えもしたくない。
「レシア、今日はすぐ戻るのか?」
 能天気にかかる声に、アウレシアはこのまままっすぐ帰る気力はないと確信した。
 気持ちを切り替えねば、この天然皇子にもアルライカの軽口にも対抗できないだろう。
 顔を上げると、日差しはまだ高い。
 妙な汗もかいたことだし、アウレシアは気分転換をすることにした。

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