暁に消え逝く星
真剣なイルグレンの様子に、アウレシアも態度を改める。
「悪いことでは――ないのかもしれない。それはあたしらの考えだから。
でも、あんたは考えたことないんだろ。あんたの着ているような絹の服なんて一生着れずに、その日一日食うことさえできずに腹をすかせて、やがて餓えて死んでいく、そういう子供もいることを」
驚いたように、イルグレンは問う。
「なぜ餓えるのだ。服も食物も、買えばいいではないか」
「買うための金がないんだよ」
「金?」
「そうさ。服も、食物も、全て、手に入れるには金がいるんだよ」
「では、金を買えばよかろう」
イルグレンは真剣に答えていた。
答えぬアウレシアに、彼に対する侮蔑の色はなかった。
ただ、困ったように微笑んで、静かに彼を見つめるのみ。
「レシア?」
「あんたは何も知らない――それは、あんた自身のせいじゃない。
でも、知ろうとしないことは、時として大きな罪になることもある。
あんたはすべてを知りたいと思うかい?」
「思う」
即答だった。
「私は新しい世界を知りたい。お前達が見てきた世界を。
もしかしたら、それは私が望むものではないかもしれない。
私が考えていたただ静かで、穏やかな、汚れないものではないかもしれない。
だが、それでも私は本当のことを、自分の目で見て、ありのままに知りたいと思う」