暁に消え逝く星
イルグレンの端正な容貌と女のアウレシアは、それだけで人目を惹いた。
アウレシアは女にしてはかなり背も高く、無駄な肉が落ちて細身ながらもたくましかったので、不躾な視線が集まることはなかったが、イルグレンは戦士というにはあまりにも顔立ち、身のこなし、雰囲気、全てにおいて優雅さを備えていて、男達の奇妙な視線を集めた。
荒くれた男達の中でも、ひときわ目立つその姿は、以前ほどではないが、やはりそぐわなかった。
受付と思われる男の所に進んで行き、アウレシアはさらりと言った。
「この男が参加するよ」
驚いたような顔で、受付の男は後ろのイルグレンをまじまじと見て、アウレシアに視線を戻した。
気にせず、アウレシアが男の持っていた紙に何やら書き込む。
どうやらイルグレンの名前らしい。
「グレン、来な」
「ああ――」
周囲の人間の外側を周って歩きながら、アウレシアはイルグレンを参加者の男達が順番を待つ場所へと連れて行った。
見るからに強そうな男達が、十人ほどいる。
どう見ても、イルグレンが一番華奢で、弱そうに見える。
「何をすればよい?」
「勝てばいいだけさ」
さらりと言うアウレシアに、イルグレンは驚いたようにもう一度参加者の男達を振り返る。
自分よりも背の高い者もいれば、腕の太さが二倍の者もいる。
「私はお前としか闘ったことがないんだぞ!!」
「十分さ」
アウレシアはイルグレンを見上げる。
最初に出会った人形のような、ひ弱な皇子様の面影はどこにもない。
天然なところは変わりようもないが、剣技に関しては明らかに実戦でも使えるよう仕込んできた。
無様に負けることはないと、アウレシアは確信していた。
「戦士にとって、闘うことは金を稼ぐ手段だよ。あんたには、剣技という働く手段を教えてきたんだ。闘ってきな。そして、金を稼いでくるんだ」