暁に消え逝く星

 どう見ても一番先に負けるだろうと、イルグレンは一番手にされた。
 周囲からもひやかしの声が入る。
 イルグレンは、一度アウレシアに視線を向けたが、アウレシアが黙って頷いたので、気持ちを切り替えて木刀を構え直す。
 合図とともに、腕比べが始まった。
 余裕で勝てると見込んだのか、相手の男が先に動いた。
 大きく木刀を振りかぶり、イルグレンめがけて打ち下ろす。
「!」
 跳び退ってかわすと、今度はイルグレンから仕掛けた。
 男が受け、力任せに払おうとしたところを、いつもどおりに受け流し、すかさず次の攻撃に入る。
 何度か剣を交わすと、イルグレンの表情が訝しげなものになる。

 手応えが、あまりにもなさすぎる――?

 幾度か打ち合って、男の剣筋はすぐに見極められた。
 隙があり過ぎると思うのは自分の勘違いなのか。
 思いながらも、次に男の攻撃をかわすと、イルグレンは返す勢いで男の木刀を叩き落した。
「!?」
 驚く男の喉元に、イルグレンの木刀が突きつけられていた。
「ま、参った」
 負けを認める男の声が聞こえた。
 その見事な手際に、
「――」
 一瞬の沈黙の後、どっと喝采があがった。



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