暁に消え逝く星

「さて、昨日の腕比べのお手前、拝見とするか」
 アウレシアが剣を抜く。
 続いて、イルグレンも抜いた。
「昨日の腕比べは、お前が出たほうがいいのではなかったか?」
「あたしが出てどうするんだよ。あんたが稼ぐことが目的だったのに。大体、出場者は賭けられないからあたしが出たら、片方しか稼げないじゃないか」
「何? お前も金を稼いだのか?」
「ああ。あの手の腕比べは、必ず賭け事もするのさ。あんたに賭けたのはあたしだけだったから、ぼろ儲けだよ」
「――お前は、私が勝つと思っていたのか?」
「思ってたんじゃない。知ってたのさ」
 アウレシアはにやりと笑った。
「最初に言ったろ? あたしは自分の腕に十分自信があるって。ケイとライカとソイエ以外なら、これまで腕比べで負けたことはないんだよ。あいつら、べらぼうに強いんだ。そのあたしと対等に闘えるんなら、あんたも腕比べでは負けることはない」
 先に動いたのはアウレシアだった。
 イルグレンが受け止める。
 それが始まりの合図となった。
 それ以上の言葉はなく、ただひたすら、目の前の相手と闘うことに集中した。


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