暁に消え逝く星

 昨日の腕比べのせいか、イルグレンの剣の腕が、また上達したことにアウレシアは気づく。
 どこまで強くなるのだ、この皇子様は――そう気を引き締める。
 もう一月以上毎日剣の相手をしてきたのだ。
 癖や、力加減、間合い、面白いほどに互いを知り尽くした。
 剣戟は、途絶えることがなかった。
 すでに互いが互いの剣筋を見極めていたので、どこにどのように打ち込むかも申し合わせたかのように続く。
 二人はまるで、剣舞を舞うように、いつまでも剣を交わし合っていた。
 だが、息があがりかけている自分に気づき、アウレシアは驚いた。
 どうやら、時間も忘れていたらしい。
 自分がこんなになるということは、かなり長い時間剣を交えていた証拠だ。
 気分が高揚して、いつまでも、この天然な皇子様と剣を交えていたいと、思っていたからだろうか。
 そんなことを考えている内に、互いの攻撃の勢いで間合いが離れた。
 肩で息をしているのは、二人ともだ。
「今日は、ここまでにしとこう」
 素直に、イルグレンも頷いた。
「ああ――」
 二人は、剣を鞘に戻した。
 その場で、呼吸を整える。
 それから、涼をとるため木陰に移動した。
 その時、果樹の向こうから、細かな水音がすることに、イルグレンが気づいた。
「レシア、この音はなんだ?」
「ん? ああ、噴水だ。果樹園にはもったいないぐらい大きな噴水なんだよ。この先に元締めが道楽で造らせたやつがあるのさ」
「見に行ってもいいのか?」
「ああ。来なよ」


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