暁に消え逝く星

 三人の乗った馬が三叉路に着いたときには、二台の馬車は止まっていて、リュケイネイアスはすでに馬から下りて、三叉路で護衛隊長と思しき人物と話をしていた。
 そして、その横には、明らかに貴族とわかる四十代の男がいる。
「あの、お貴族様は何者だい?」
 馬から下りて、レシアは手綱を握ったまま、隣のソイエライアに小声で問う。
「聞いても驚くなよ」
 ソイエライアも小さい声で確認してから答える。
「もと宰相閣下だ」
「――」
 アウレシアは絶句する。
 国元が危うい時期に、政《まつりごと》を行う宰相を国外へ送り出したのか。
 それでは、内乱に対しての対応も後手に回るであろう。
 内乱からたった三日で滅びたのも頷ける。
「あらかたのことに驚いちまったから、これ以上驚くことはもうなしにしろや、ソイエ」
「とりあえずは、ない」
 言い切るソイエライアだが、アルライカは絶対に信じていないような顔で自分の相棒を見ていた。
 アウレシアは視線を戻し、リュケイネイアスのいるほうに向けなおした。
 馬車が二台と荷馬車が一台いうことは、大きい一台は皇子様と宰相、もう一台の小さいほうには世話をする侍従でも乗っているのだろう。
 馬車の周囲には十人ほどの護衛が馬に乗ったまま待機している。
 御者台に座っている二人組も護衛だとすると、隊長をあわせて十五人。
 侍従を入れても二十人前後というところか。
 こちらの負担はそんなに多くはない――アウレシアは冷静に分析する。


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