暁に消え逝く星

 そうして、アウレシアの腕を引いていた力を緩めた。
 だが。
 アウレシアは自分をとらえていたイルグレンの手を逆に引き寄せた。
「うわっ!!」
 急に引き寄せられバランスを崩した身体は、アウレシアをとらえたまま円形の噴水池へと飛び込んでいく。
 高い水音が、飛沫がばらばらと飛び散る音とともに辺りに響いた。

「レシア!! 何をする」

 思ったより深く、けれど水温の高かった噴水池から顔を上げるなり、イルグレンは叫んだ。
「気持ちいいじゃないか。楽しいだろ、これも」
 体勢を整え、濡れてはりついた髪をかきあげると、目の前のアウレシアは声をあげて笑っていた。
 彼と同じように、ずぶぬれの状態で。
「皇子様もかたなしだ」
「お前は、めちゃくちゃな女だな」
 呆れたように言いながらも、イルグレンは彼女の頬にかかる濡れた髪をよけてやる。
「あたしはしたいときに、好きなことをするのさ」
 アウレシアは、イルグレンの首に腕を絡めて引き寄せる。
 くちづけると、慣れているといわんばかりに応えてくる。
 くちづけては離れ、互いの濡れそぼった顔を見ては笑い合う。
 それは、まるで恋人達の戯れのようで。

「あんたが好きだ、グレン」
「私も、お前が好きだ」

 あとはもう、言葉にならなかった。



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