暁に消え逝く星
他愛もない話をしながら歩く帰り道。
日が暮れてから戻ると、宿の門灯の下に立っている男の姿が目に入った。
一瞬、刺客かと思いアウレシアとイルグレンの剣に手がのびかけたが、殺気がない。
よくよく見ると屈強な影はリュケイネイアスのものだ。
「なんだ、びっくりするじゃん。こんなとこでどうしたのさ」
言いながら、アウレシアが警戒を解く。
「遅いから心配した」
「大丈夫だよ。この間から、変な気配はしないし、レギオンの目があるところで、悪さする奴もいないだろ?」
「エギル様が心配してる」
「――ごめんよ。次からは日が暮れる前に戻るよ」
「すまない」
イルグレンも続けて謝る。
「じゃあ、グレン。また明日」
「ああ」
ほんの一瞬、二人の視線が絡み合い、離れる。
イルグレンが扉の向こうに消えるのを見計らって、
「レシア。お遊びなら、程々にしておけ。あとがつらいぞ」
リュケイネイアスが低く告げる。
アウレシアは、その言葉の意味する所が最初わからなかった。
「何それ?」
「あの皇子様には婚約者がいるんだろ」
意味を解すると、アウレシアは小さく笑った。
「レシア?」
「ケイ、親父くさいとは思ってたけど、今の物言いは、完璧に娘の心配をする親父だよ?」
だが、リュケイネイアスは誤魔化されなかった。
「旅はいずれ終わるんだ」
「わかってるさ、そんなこと」
呆れたようにアウレシアはリュケイネイアスを見上げた。