暁に消え逝く星

 どうやら、世間知らずの小娘のように、浮かれて現実が見えなくなっていると思われているらしい。
「あたしは、あいつとずっと一緒にいようなんて思わないよ」
 そんなことは、初めからわかっていることだ。

「だって、グレンは皇子様だもの。一緒になんて、いられるわけないじゃんか」

 この恋は、西に着くまでの、お遊びのようなもの。
 きっと自分達は、初めて出会った自分とは何もかも違う異性に興味を惹かれただけなのだ。
「わかっていても、気持ちは止められない。
 もし、人を選んで好きになれるって言うんなら、あたしは迷わずあんたを好きになったさ、ケイ」
 自分が理想とする男が、まさにここにいるのに、自分はあの天然皇子を愛おしく思った。
 恋とは、本当に厄介だ。
 何もあんな、自分とは何から何まで違う道を行くだろう年下の男に惹かれることもないのに。
「あたしは身分なんて、どうでもいい。好きになるのに皇子も乞食もあるもんか。
 永遠の愛なんて求めないよ。気持ちは、変わるもんだからね。
 今、好きだから欲しいんだよ。今だけでいいよ。
 永遠なんて、そんなもんは要らない」
 リュケイネイアスは大きくため息をつき、アウレシアを見下ろした。
「お前は、強い女だな?」
「当たり前だろ。あたしを誰だと思ってるのさ」
「後で泣いたりしないな?」
 父親のような物言いに、アウレシアはまた笑った。
「しないよ。ケイはほんとに心配症だなあ」



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