暁に消え逝く星

「お前はいい女だ。もっと自分を大事にしろ」
「らしくもない、ことを言うのね」
「そうかもしれん。だが、お前を見ているとらしくもなくなる」
 男は女に掛け布をかけると、徐に立ち上がった。
「下で飲んでくる。朝まで戻らん」
 それだけ言うと、男は部屋を出ていった。
 女はただ黙って空を見つめていた。
 たった一つ、やり遂げたいことがある。
 それ以外は、もうどうでもいい。
 女はずっとそう思っていた。

 自分を大事に。

 それは、己を愛している者だけができることだ。
 自分にはできない。
「あたしにはもう、何もないのに」
 女は、静かに呟いた。

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