妖怪のアイツと人間の私 ~夏空に想いを~
さすがの私でも苦笑いするしかない。
和宏さんも妻の過保護ぶりに溜め息をついているようだった。
「それじゃ、行ってきます。」
何とかおしきり家を出た。
まだ東京の方に住んでいた頃は一人で行くには遠すぎる距離で紗代さんと和宏さんに連れられ毎年行っていた。
だから一人でお父さんとお母さんのお墓に行くのは初めてだったりする。
変に緊張しながら最寄りの駅の数少ない電車に乗った。
土曜日という事もありいつもより人が沢山乗っている。
フカフカとはいえない座席に座りながら考えるのは魄弥のこと…―
『無理だ。もう離さない』
あの時はさほど気にもとめなかったが後々考えると違和感を感じていた。
魄弥の言い方には以前私と会っていた…
知り合いだったような口振り。
私の思い過ごしかもしれないが…。