妖怪のアイツと人間の私 ~夏空に想いを~
―――――…『アヤカ』
ほら、まただ…。
脳裏に優しく私に笑顔を向ける子がいる。
でも見えているのは口元だけ。
白く靄(もや)がかかった様に顔を見ることができない。
―――――…『アヤカ』
貴方は誰?
「―……ません!」
私は忘れてはいけない人を忘れているの?
「…すみませんッ!!!」
「……ッ!!!?」
振り返ったままだった私に前から来ていた自転車に乗った人が怪訝そうな顔をして大きな声を出していた。
「す、すみません」
多分、中々退いてくれない私に大きな声を出すしかなかったのかもしれない。
すみませんともう一度謝り再び足を動かし始めた。