さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「先頭は怖いです…」
ただでも嫌々ここに来たのに。
まさか、先頭なんて。
「行ってきな、あずちゃん。一応この中では一番たくましい女の子だからなぁ。」
ははっと軽快に笑う。
嘘でしょ…。
笑い事じゃないですよ、キンさん!
心の中で何度も反論しても、いまさらどうにも出来ない。
斎藤さんなんか、焦れていらいらしているのが目に見えるし。
手にギュッと力を込める。
「原田さん、行きましょう。」
「あ、ああ。」
キンさんから行灯(あんどん)を受け取る。
目の前にそびえ立つのは、真っ暗な森。
普通に生えてる木じゃなくて、それはあろうことか柳の木。
柳って、霊が宿るって聞いたことがある。
ぶわっと春の夜の冷たい風が吹くと、全身に鳥肌が立った。