さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「これは失礼。翼くんの評判を聞いて、いち早くお話をしたくて。」
男だけれど、ふふっと女らしく笑う。
伊東 甲子太郎、俺の恩人。
「そんな、滅相もないですよ。」
「いえ。私の育て上げた隊士たちが次々と負けるんですもの。一体どんな指導を受けたのかしら?」
顔の前で指を交差させて、楽しいという表情をする。
一見見れば、ただの優しそうな人だけれど、その瞳の裏には何かが強く根ずいている。
俺も最近になって気づき始めたのだけれど。
獲物を狩る者の目。
まさに、狩人。
甲子太郎はそんな目つきをしていた。
「現代で少し、武道を嗜めただけです。」
妙な疑いを持たせないように、軽く答える。
万が一の可能性だけれど、スパイとして疑われているかもしれないから。