さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「甲子太郎さん。」
閉ざされた襖の向こうから、少し高い声がする。
とっさに、それが誰だか甲子太郎さんの肩越しに覗き込む。
静かに襖が開くのを、じっと見つめる。
「遅くなりました、伊東先生。」
直感だったけれど、それが誰かは一瞬で分かった。
藤堂 平助、このひとが。
思ったよりも若く見える。
1844年生まれだから、今は20歳くらいか。
俺も今年で19を迎えたから、藤堂は俺の一つ上ってことか。
年上には見えないけれど。
「誰っすか、コイツ。見たことない顔ですね。」
藤堂は俺を見て顔を顰める。
「もしかして、お前が翼?」
「!」
どうして、それを?
まさか自分のことを当てられるとは、思ってもみなかった。
「あずみに聞いたんだ。そっか、まさかこんなところで会うとは思わなかったな。」
ははっと軽快に笑う。