さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
人懐っこい笑顔だな、と思うとふっと緊張が解けた。
「俺は藤堂 平助。歳も近そうだし、平助でいいよ。えっと…」
「自己紹介ならいらないよ。全部知ってるから。」
にっこり、笑いかける。
平助のことも俺は知っている。
どこで生まれて、どうやって育って、どういう最期を迎えるのかも、全て。
「そういや、あずみが言ってたな。翼は頭が良いって。」
ふいに出たあずが俺の話をしていた、という事実に思わずドクンと心臓が跳ねる。
歴史上の人物が俺の幼馴染の話をしていると思うと、不思議で仕方ない。
「アイツは否定してたけど、やっぱりあずみは馬鹿なんだな。」
「まあ、中の下くらいかな。」
ぽつり、言葉を落とすと、平助は楽しいという様に笑った。
随分と気さくなやつ。
「翼とは気が合いそうだよ。」
「俺も、今そう思った。」
なんだか、照れくさい。
二人視線が交差して、また笑った。
「ちょっと、貴方たち意気投合するのもいいけれど、私のこと忘れないでくださいよ。」
甲子太郎が拗ねたように言う。
まったく、一番年上には見えないな。
「翼くん、今後の経験としてこの時間は捉えてくださいね。」
こくり、頷く。