さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「この世は、それに似ているというのですか?」
目を三日月に歪ませる。
納得がいかないのか、甲子太郎の目は鋭く光っていた。
別に、旧幕府のことを言ったわけじゃないけれど、そう捉えてしまったようだ。
甲子太郎も旧幕府軍の人間だから、幕府を悪く言われていい気ではいれない。
平助は平家物語を知らないようだから、良かったけれど。
「新政府軍のことだよ。今は勢いがあるけれど、いつかは息の音も止まるだろうって話。」
そんな未来、俺は知らないけれど。
この場をしのぐためには、嘘を貫くしかない。
「本当?」
「ああ。」
俺の言葉を聞くと、甲子太郎の表情はふっと緩んだ。
それを見て俺もほっと胸を撫で下ろす。
甲子太郎は時折凄い雰囲気を作り出す。
一瞬ですべてを崩壊させるくらいの。
それも、甲子太郎自身の“志”からくるものなんだろう。
決して揺るがない、紅緋色。
―――燃えるような眩しい赤、べにひ。