さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
目を伏せた私とは対象に、山南さんはにっこり微笑んだ。
「土方局長の不器用な優しさですよ。私は一之瀬くんがそう言いださないように、見張りを頼まれてるんです。」
優しさ、なんて。
今の私には、放って置かれた方がよっぽど嬉しい。
「取り調べの現場は、残酷ですから。土方さんはそれを貴女に見せたくないのでしょう。」
その笑みに抑え込まれて、何も言えなくなる。
確かに、私を思っての行動だとは十分に理解した。
でも。
だからこそ。
私だって、新選組のことを考えれば、動かずにはいられない。
「私、ちょっと厠に!」
かわや、トイレに。
私がもっと頭のキレる人間だったら、もっと上手な嘘をついて切り抜けられるんだろうけれど。
今の私にはこれが限界。