さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―





目を伏せた私とは対象に、山南さんはにっこり微笑んだ。





「土方局長の不器用な優しさですよ。私は一之瀬くんがそう言いださないように、見張りを頼まれてるんです。」





優しさ、なんて。





今の私には、放って置かれた方がよっぽど嬉しい。





「取り調べの現場は、残酷ですから。土方さんはそれを貴女に見せたくないのでしょう。」





その笑みに抑え込まれて、何も言えなくなる。




確かに、私を思っての行動だとは十分に理解した。





でも。





だからこそ。





私だって、新選組のことを考えれば、動かずにはいられない。





「私、ちょっと厠に!」





かわや、トイレに。




私がもっと頭のキレる人間だったら、もっと上手な嘘をついて切り抜けられるんだろうけれど。





今の私にはこれが限界。





< 145 / 186 >

この作品をシェア

pagetop