さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「は?」
突然そんなことを言われたってわけが分からない。
「甲子太郎さんも酷い人だよね。よりによってこの時期に翼を外に出させるなんて。」
「俺なら大丈夫だよ。前に言っただろ?俺は現代にいたとき、剣道で…」
「そういう問題じゃないんだよっ!」
真剣な表情。
そんな顔しなくても、分かってるよ。
今の京の状況くらい、歴史の流れから察しがつく。
「稽古に出るってことは、この先の戦にも出陣しなきゃいけなくなるんだよ?翼はそんなこと、する必要もないのに。」
「落ち着けって。俺は本当に大丈夫だから。」
長いまつげを伏せた篠原の肩をポンと叩く。
心配してくれる気持ちは嬉しいけれど、俺は逃げるわけにはいかないんだ。
この現実から。
あずと共にここに残ると決めた、現実から。
「…それなら、行こうか?」
ピンと空気が張り詰める。
瞳の中では青白い何かが揺らめいている。
その凛としたオーラが有無を言わせない。
「町に、出かけようよ。」