さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
「私も最初は全然出来なかったから、練習すれば出来るようになりますよ。」
「そうだよ!あずちゃんなんて最初来たとき見ていられなかったからね!」
ぐさり。
助け舟を出したつもりが、逆にこっちが痛めつけられてしまった。
「キンさん、それは言わない約束じゃ…。」
うう、無念だわ。
まささんは私たちのやり取りをじっとみて、口を開いた。
「あずみちゃんは身分が高い家から出たの?」
じっと私の目を射る。
突然の質問に言葉を失ってしまう。
「料理が出来なかったなんて、きっといい家柄なんでしょう?」
家柄なんて、まったくありません!
庶民のど真ん中の、根っからの一般人です!と言いたかったけれど、これは駄目駄目。
「わ、私は普通ですよ。」
「それなのに料理が出来なかったの?」
あんまり言い責められると、嘘がばれそうで苦しい。
このご時世料理が出来ないというのとは、そんなに珍しいことなの?
現代にいたとき、確かにお母さんに料理はちゃんと出来るようにしておきなさい、と言われていた。
でも、料理なんて出来なくても特に問題なかったし、周りもみんなそうだった。
最もレトルトや、インスタント食品が溢れる世の中だったから、最悪料理なんかできなくても生きていけたくらいだし。
改めて時代の差を痛感する。
お母さんの言うこと、ちゃんと聞いておけば良かった。
「あはははは・・・」
苦しいけれど、まささんのことは何とか笑って誤魔化した。