さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
キンさんが怒るのを見るのは、初めて。
度重なる失敗もあるんだろうけど、キンさんはそんなことだけで怒るような人じゃない。
多分、原因はこの態度。
「なんで謝れないんだい!?」
キンさんは今にも殴りかかっていきそうな勢いで。
こ、怖すぎる!
あの土方さんに勝るとも劣らない勢い。
沖田さんも怒るとこうなるのかな。
そんなことを考えてしまう。
「どこの家の育ちかなんて知らないけどねえ、礼儀の一つも知らないような奴は令嬢でもなんでもないんだよ!」
ぴしゃりと言い放ったキンさんに、まささんは今にも泣きだしそうな顔をしている。
「…ッ!」
「逃げ出すんじゃないよ。」
この場から立ち去ろうと思った考えも、すべて見透かしているかのような言い方。
確かに、まささんは一歩足を退こうとしていた。
「そんなんじゃ左之助だって振り向いてくれないだろうねえ。」