さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
原田さんの名前が出た瞬間、まささんの顔つきが変わった。
「そんなわがまま娘のことなんか、誰が好きになるっていうんだい?」
けっと言い離す。
うう、修羅場になってきた。
昨日に続いて、今日も巻き込まれるなんて。
「キンさん、言い過ぎですよ。」
そっとキンさんの前に立つ。
止めなければ、大変なことになる。
この二人なら、殴り合いにだってなりかねないもの。
そろそろエスカレートしてきたキンさんを止めに入ったけれど、私の声はまったく届かないみたいで。
「左之助に好かれたいのならもっと自分を磨くことさね。」
まささんの表情が女の顔つきに変わる。
そして、キンさんも。
キンさんはやはり揺るがない。
それだけ言い残すと、キンさんはいつもより異臭が漂う台所から出て行ってしまった。
き、きまずい。
まささんの目からは、今にも土砂降りの雨が降ってきそうなほど涙がたまっていた。
「まささ…」
雰囲気に耐え切れず声を掛けようとしたけれど、まささんも小走りでどこかへ行ってしまった。