さよなら、いつか。②―幕末新選組伝―
松本先生を見送って、私たちは屯所の縁側に移動し、腰を下ろした。
「まさか、ここまでとはね。」
ははっと笑う沖田さん。
そんなに辛そうに笑わないで欲しい。
涙が溢れてくるのがバレそうで、思わず俯く。
「本当はね、怖いんだ。」
隣から少し弱く震えた声が降ってきた。
怖い、なんて。
沖田さんらしくない言葉。
「病気で死ぬことよりも、自分の居場所が無くなってしまうことが。」
病気よりも。
予想もつかなかった言葉に唖然とする。
私が労咳になったら、きっと病気で死ぬことを何よりも恐れると思う。
自分の居場所が無くなってしまうことなんて、気にもとめないだろう。
それに、沖田さんが労咳で寝込んだとしても、彼の居場所は確かにここにある。
みんなが彼を、こんなにも必要としているのに。