ゾンビのヒットマン
なるほど、この女。

極めて高いレベルの変態のようだ。

つまり私が“ゾンビパウダー”について知っていたせいで、自慢げに語るチャンスを失ってしまった。

そういうコトなのだろう。


「なんというコトだ……偶然にも、“ゾンビパウダー”に関する記憶が突然に全て消滅してしまった……誰か詳しく教えてくれる美人はいないだろうか……」


「……………………」


「……………………」


「……………………いないみたいですね」


なぜだ!

なぜ答えない!

興奮するチャンスを与えてあげようという私の最大限の優しさがなぜわからない!


「あ、でもしかたないから、特別に教えてあげますよ。特別、ですからね」


なるほどこの女……面倒くさい類の人間だったか。

こういう女は、上手く泳がせておくコトに限る。

適当に話を合わせるフリをするだけで、相手は勝手に満足するのだ。

その程度、恋愛心理学の本を熟読した私にはまるわかりだ。

それに、上手く泳がせるコトに関して私の右に出る者はいないだろう。

相手が何を話しても、例え相手に無視されても、私なら気にせず彼女を見つめ続けるコトが出来る。

そう、つまり私は、男の中の男。

そう考えていただきたい。
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