私淑彼女
「どんな人だったかな……」

曖昧な記憶を辿るも、やはり思い出すことは出来ず、考え込んでいる間にHRが終わってしまった。
ザワザワと教室が騒がしくなり、佐紀も嬉しそうな顔で帰って行った。


「……」
キョロキョロと辺りを見回しポケットから紙切れを取り出す。

「体育館裏らに来て下さい」

また顔が熱くなるのがわかった。
手で顔を冷やすように押さえ、冷静になれ、と頭の中で反復する。
今まで友達が出来たことが無い自分が何故こんな手紙を貰うのか。

まさか相手の一目惚れ?


……でもこんな冴えないどこにでもいるような顔なのに。


今まで生きて来た人生で、初めての告白かもと内心舞い上がる理子の顔は、朝のぎこちないそれとは違い、柔らかいものとなっていた。


誤字があっても気にしないと言わんばかりの顔で、理子は教科書を鞄にしまい、教室を後にした。
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