私淑彼女
――――これが二人の毎朝の会話なのだった。



近所の人達は皆、そんな二人を暖かい目で見守っていた。
そして、互いに学習すれば良いのになあと日課のように話していたのだった。


勿論、その事実を二人は知る由も無いのだが。





「ごめんね、理子ちゃん」
「ううん、気にしてないから」
「あ、もうこんな所だ。じゃあね!」
交差点に着いた所で、謝っていた一沙がチカチカと赤に変わりそうな信号を慌てて走って行く。


そんな一沙の姿を見送り、理子ははあと溜め息を吐きながら、重い足取りで交差点のすぐ近くにあるバス停に向かった。
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