私淑彼女



一時間目は、微妙に嫌いな数学の時間。
担当の先生がハゲているからあまりやる気が起きない。
つい目線が頭に向かってしまうからだ。



カツカツと黒板の上でチョークが踊る。
意味不明な数式を書いていく先生について行けなくなり、途中から物思いにふける事にし、カタンとシャーペンを机に置く。



「……今日の夕飯なんだろ」
この憂鬱な気分を払拭するには、家での楽しみをどんどん思い浮かべるに限る。
ほら、段々夕飯の匂いが……




「おい」

ビクリと体が強張る。
よだれでも出ていたかと慌てて口元を押さえるが、どうやら自分では無かったらしい。



「神田、起きろ」
「ん……あ?」
「ほら、寝ぼけてないであの問題解け」
クスクスと教室で笑いが起きる中、理子だけは理解が出来ず頭にはてなを浮かべていた。
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop