グッバイマイオールドフレンド
はなしは、それぞれの今の暮らしや、仕事についてはなしはじめていた時、司会の
カズオがマイク席の前にたった。
「皆様、ご談笑のおじゃまをするようですが、ここでおはなししたいことがあります」

 神経がピクリと反応した。
 そう。
 はなしに夢中で、忘れていた。

「詳しくは、中沢先生からお伺いしたく思います」

 中沢は、静かに正面に進んだ。
 カズオがマイクを渡すと、落ちつかない気持ちをどうにかするように、マイクの調子
をたしかめる。
「ええ、皆様。青日会の開催参加を呼びかけるはがきをご覧になっていただいたと
思います。ここにお越しになっている皆様においては」
 冗談をまじえたわけではなかろうが、会場に苦笑がおきた。
「葉書に、郎三くんの事について、加えさせていただいたことは、わたしの一存を委
員会の皆さんが、受け入れてくれたからです。恥ずかしながら、ここにその事につい
て、はなしたいと思います」
 会話をしながら、耳だけかたむけていたような、出席者の視線が中沢に集まった。
「支援金を募りたいという言葉に、おどろかれた方が多いと思います。それについて
説明しなければなりません。いや、説明させてください」
 中沢の懇願するような表情に皆、虚をつかれたように、口をぽかんとあけた。

 あの中沢が。
 こんな態度を示したことは、一度もなかった。中沢になにがあったのか?

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