グッバイマイオールドフレンド
「わたしが、久しぶりに郎三くんにあったのは、偶然でした。それは、わたしがミャンマ
ーを訪れていた時です。旅先で、知人に会うことは、わたしにはないことでした。そ
れが寄りに寄って郎三くんに会うとは、なんということかと、その時思いました。皆さ
んもおわかりでしょうが、わたしは、教師として、大変厳しく接してきました。皆さまの
なかにも、わたしから制裁をうけた方がおられるでしょう」
 出席者の何人かは、うむとうなずいた。
「皆さまには、苦痛であったと思います。しかし、わたしはその時、皆さまによかれと
思って、行ってきました。今の世の中の教育をみますと、わたしの信条はそぐわない
ことになります。しかし、自分の感情のままに、体罰を加えたわけではありません」
 ほんとうにそうか?
 という表情が出席者のなかに伺える。
「そんな教師生活のなかでわたしは、たったひとり。怒りという感情のままに、体罰を
加えた生徒がおりました」
 会場の空気がはりつめる。
「それが、郎三くんでした。郎三くんは、遅刻を繰り返し、校則は守らない、わたしには
目の上のこぶのような生徒でした。ある日、わたしが遅れて登校したきた郎三くんの
前にたつと、郎三くんは、わるびれる素振りもみせず、通り過ぎようとしました。
わたしは、体のほてりをかんじました。
そして、もっていた木の棒で、郎三くんをひどく叩きました。なんども、なんども。
はっときづくと、頭から血を流している郎三くんの姿が目の前にありました。
わたしは、すぐに保健室に行くよう、うながしました。
郎三くんは、無視して、通り過ぎました。
これは、さすがにまずい。
わたしは、そう思いました。
郎三くんのことをあんずる気持ちよりも、自分の保身を考えていました」

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