海のみえる街
「待たせてごめん!」
「いや、大丈夫。ちょっと人に聞かれたくないから…」
環はそういってだれもいない空き教室に私を連れてきた。
窓から指す昼間の暖かな光が環の髪をキラキラとより綺麗に光らせる。
まるでフィルターを通して見ている景色のようだ。
今すぐお父さんの使ってないカメラを棚から取り出してこの景色を収めたい衝動にかられた。
やっぱり私は香川虎治ー‥ お父さんの子どもらしい。
「こっちもいきなり呼びつけてごめん。それで話なんだけどさ…」
「うん」
「付き合ってくれない…?
俺の趣味に。」
…は………?趣味に付き合う…?
環が言いたいことがどういうことか全く理解できない。
「えっと、付き合えるかどうかは環の趣味によるけど…私に何をしてほしいの?」
「………モ、モデル…」
環は少しはずかしそうにぼそりと言った。
モデル…。
私はその単語からすぐさま頭の中にお父さんが仕事で撮ってきた女性の写真を思い浮かべた。