俺が唯一愛した女 (1話から公開開始)


本気で愛した女を傷つけてばかりの挙句
俺は死なせてしまった。




「おい待て、優斗… 」



章司を残し


霊冷室から出た俺は
無我夢中で走り出す。



あの時…



えみの連れに殴られ記憶が遠くなった時
そのまま俺が死んでいれば



優衣は強姦される事も、死ぬ事もなかった。



優衣じゃなくて



何で俺を連れていかねえんだよ…



優衣じゃなく
俺が逝けたら良かったのに。



優衣の死を受け入れる事なんて
俺には絶対出来ないし、絶対認めない。



そうだよ、これは何かの勘違い
… 優衣は部屋に居る、きっとそうだ。



優衣は死んでいない
優衣はずっと引きこもってたんだから。



全力疾走して


どれだけ息が苦しくても
どれだけ脇腹が痛くても



今の俺には



痛みも苦しさも感じない程
優衣の家に行くことに無我夢中だった。








ーーーーーーーーーーーー



『はぁはぁ…』



優衣の家の前まで来た俺は



息切れする呼吸を整え
インターホンを押す。



「はい… 」



優衣の母親の声がした。



『小上で…』



「帰って!!!」



俺の声は


優衣の母親の声に
よって掻き消され



優衣の家に
入る事なく



インターホン越しで
追いかえされていた。



そりゃあそうなるよな
一気に現実に引き戻される。



俺のせいで優衣は…



翌日、優衣の通夜が行われた。


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