俺が唯一愛した女 (1話から公開開始)


「あ~怖かった…アンタようあんな怖いおっサンの喧嘩買えるなぁ… 」



『……。』



マジで誰なんだ?
俺の知り合いか?



いや、こんな男知らない。
けど、どっかで見た様な…



「いや~怖い怖い」



俺の腕を掴み歩き続けながら



やたらテンションの高い男は
1人でブツブツ話している。



「こういう時こそ勇気を出して助け…」



『札は?』



俺の言葉に男は
話すのを辞めて



立ち止まり俺の腕を
離すと笑顔を向けた



「警察?嘘も方便ってな♪」



『は?お前嘘…「それより俺の事覚えてるか?」



『…誰?』



男は咳払いをすると
突然鼻唄を歌い出す。



♪~♪~♪



聞き覚えのあるメロディに
俺は静かに耳を傾ける。



この曲…



『もしかしてお前あの時の、路上で歌ってた…』



「当ったり~♪」



琢磨サンの店から家へ帰る途中
優衣と初めて出会ったあの日…



路上で歌っていた2人組の男の1人が



今、俺の前に居る。

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