俺が唯一愛した女 (1話から公開開始)
彰人の言葉に戸惑い黙り込む俺。
「…解るよな?目の前の出来事から逃げるのは簡単だけど向き合わなきゃ前には進めない」
『……。』
逃げてる?俺が?
「お前がバンドを抜けてから…変な連中とつるんでる事、バンド仲間内では結構有名やで」
『有名って…』
確かに俺の時間は…
あの日から止まったままかもだけど
別に逃げているつもりはなかった。
前に進もうと俺なりに努力して
忘れようと必死だった。
「人間ってさ、忘れよう忘れようともがけばもがくほど頭の中で考えるから逆に忘れられへんものやで」
似たような体験持つ
彰人に言われた言葉は
俺の胸に突き刺さる。
「優斗」
『ん…』
「いや、いいや。またな!」
何か言いたげの彰人は
軽く片手を上げ、俺の前から消えた。
『……。』
彰人と別れ
暫くその場でボーッとしていた
俺は、自分のマンションに戻る。
『……。』
久々に帰った自分の家を懐かしく感じながら
俺はゆっくりドアを開けた。