俺が唯一愛した女 (1話から公開開始)


『ホコリくさ…』



3ヶ月近く空けていた
家は空気が澱んでいて



電気をつけ、部屋の窓を開ける。



『寒…』



俺の顔を突き刺す冷たい風。



ふと


床に転がっている
携帯が目に入った



俺はバッテリーが外れた携帯を
手に取り無言で見つめる。



『……。』



水没させて壁に投げつけたこの携帯は
優衣との思い出が沢山詰まっている…



良い思い出だけなら良かったのに



- バキッ -



俺は力づくで携帯を折りゴミ箱へ捨てた。



携帯を見ていると
優衣の声が聞こえそうで怖くなる



「ごめんね…」って
謝らなきゃ行けないのは俺の方なのに



この時俺が携帯を折ったのは
何らかの形で自分の気持ちに



ケリをつけたかった。

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