俺が唯一愛した女 (1話から公開開始)
『どうも』
軽く挨拶する俺。
「 …もしかして優斗君かな?」
『そうですけど…』
初対面の坊主が何で俺の名前を?
此処に来るのは初めてのはず…
そう思い思わず坊主に聞き返す。
そんな俺を見て
坊主は無言で微笑みながら
小さな手帳を手渡して来る
それは…
紛れもなく優衣の愛用手帳だった。
『……。』
「浅倉サンは…娘を亡されてから父方の実家に一時的に戻られてね」
チラッと手帳を見て
俺に視線を戻す坊主
「もし君が来たら渡して欲しいと、この手帳を置いて行かれたんだよ…」
優衣の手帳を俺に?
坊主は俺に手帳を渡すと
何も言わず姿を消した。
これ… 俺が読んでもいいのか?
墓地の近くの
ベンチに腰をかけた俺は
ページを開けず暫くの間
手帳の表紙だけを見ていた。