シンデレラの王子は。

力強く床を跳ねるボールを操り、キュッキュッと音を奏でてコートを走る。
やっぱりプロは違うなって思う。バスケのことを未だによく解っていないけど、何処かが典型的に違って、レベルの高さに圧倒されながら、試合を観戦するの。
今までに見たことのない顔つきや俊敏な動き、そこには、アタシの知らない祐紗兄の姿があった。まるで、初めて逢った人みたいな感覚。
「ガンバレ!!!」
って言ったの聴こえたかな。
聴こえるわけないけど、揺れる会場で、大きな声で思いっきり叫んだ。言われなくても頑張っているとは思うけどね。
『ゴー!ファイト!レッツELUCA!』
先程のチア達が再び応援。
負けじと応援をするアタシは、本当に負けず嫌いだ。
ほら今、一ノ瀬さんに祐紗兄がパスした。もうゴール目前だけれど、背の高い人が立ち塞がる。
もう!!!どいてよっ、一ノ瀬さんがゴールできないじゃない!!!
でも、そんな大きな壁にも動じず、華麗に交わしゴールに向かって綺麗に弧を描く。そのボールはリングに当たらることなくシュッと吸い込まれる。
会場はよりいっそうの盛り上がりを見せる。一ノ瀬コールが始まる。アタシもそのコールに曖昧ながら乗った。

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