シンデレラの王子は。
一ノ瀬さんは余裕綽々で観客席に向かってニカッと手を振る。
体育館の照明のせいもあってか、一ノ瀬さんが人一倍輝いて見えるのは、気のせいかな?
光る汗を味方につけ、楽しそうにバスケをする人ってかっこいい。
手を振っていた時、目が合った気がしたのも、また気のせいなのかな。
今日の試合も圧倒的な強さで勝利を飾ったELUCA。
「これから打ち上げ行くんだけど、来る?」
差し入れの手作り蜂蜜レモンを持ってロッカールームへ行ったときのこと。祐紗兄がレモンをつまみながら言った。
「-----アタシは部外者だから…」
男の匂いが充満するロッカールーム。意外に臭くはなくて、爽やかな汗の匂い(?)がする。
「全然大丈夫、みんな彼女連れてきたりしてるから」
「でも…」
「お前、可愛い妹見せびらかしたいだけだろ~」
ニヤけながら、少し髭を生やした人が言うとみんなが笑う。
「バレたー?」
また笑う。
「つーか、俺ら臭ぇよな」
とアタシに気を使って、シャワー浴びたあとでシーブ○ーズまでしてくれるから、やけに微笑ましかった。
アタシが差し入れした蜂蜜レモンは、バクバクとつまんでくれたから、すぐに無くなってしまい作ったかいがあった。