シンデレラの王子は。
さっきとは一転、甘えた声を出すその人は、祐紗兄に媚びまくっていた。
「でも、言われて見れば目が大きいとか似てるかも♪
よろしくね」
手を差しのべられたので、アタシも手を出して、首脳会談の時の握手みたいになった。
「てか、青山さん。架嗄くんのことどうなってるんですかぁー?」
彼女は握手のあとに青山さん(ELUCAの監督)に話題を振った。
架嗄のこと?
「まだ高1だろーが。早ぇんだよ、身がまだ熟してねぇ。」
早いって?
「そんなこと言ってたら、BLUE(←ELUCAと2トップのチーム)に盗られちゃいますって!!」
「そんときはそんときだ~!!」
今日は呑むぞー♪と酒が回ってきたせいか、上機嫌の上に適当な返事。
そうか、架嗄も祐紗兄と同じように目をかけられているんだ。
祐紗兄も架嗄も、自分をしっかり生きて、夢に向かって歩いている。アタシは、高校を卒業後、一体どうするのだろうか。取り敢えず進学校を受験し、取り敢えず受かり、取り敢えず上京。そこからどうしたんだ?考えたことない。
小学校の時の将来の夢は、デザイナー。でも、今はそんなこと1㎜も考えていない。中学1年のときは、ずっと続けてきたダンスを職業にしたいなんて思ったこともあった。