シンデレラの王子は。
「一ノ瀬さん、驚かせないでくださいよ!!」
ニカッと笑って“わりぃ”と呟いた。アタシも釣られて笑顔になってしまうの。
「てか、もう1件行くんじゃないんですか?」
「ドタキャンしてきちゃった」
「どうしてですか!?」
「女の子一人で帰らせるなんて、最低でしょ」
そういうかっこいい言葉、サラって出てきちゃうのがすごいと思う。少し照れて目が泳いでしまうところもかっこいい。そういうことされると硬直しちゃうんだよね。。。
「一ノ瀬さんは優しいんですね」
「-----そういうんじゃ…。」小さな声だったから、アタシの耳まで辿り着かなかった。
「今なんて言いましたか?」
「なんでもないよ」
そう言われると、知りたくなる。けれど、もう一度聞いて、ウザがられたら嫌だったので、グッと好奇心を胸の奥にしまった。
一ノ瀬さんは前の時と同じぐらいの距離をとり歩いてくれる。近すぎず、遠すぎない距離。手を伸ばせば余裕で届くけれど、そんなことできない。
普通に歩いたら遠く感じる道も、君と歩くと一瞬で着いちゃうの。もっと遠ければいいのにって思っちゃう。
すぐにバイバイって手を振らなきゃいけなくて、いつでもメールしてねって言われたら、今すぐにでもメールしたいの。