シンデレラの王子は。

ジュースを持っていない方の親指を立て、それを見せつける。
何がナイスツッコミだ。
…でも、この笑い合えて、ふざけあえる空気感と、アタシと高橋くんの間にある友達関係が、心地好くて毎日こうして来てしまうのだ。ここまで仲良くなれた男友達って、高橋くんが多分初めてで新鮮だった。向こうはアタシのことをどう想っているのかは解らないけど、アタシは『イイ人』だと想ってる。
「つーか、さっき神谷と歩いてた人って、なんなの?」
「何って?」
「やっぱいーや」
「途中で話やめないでよ、気になるでしょっ」
「一生気になってろ」
真顔でそういうこと言っちゃいますか。アタシだって、一応女の子なのに彼女さんとは扱いが大分違うような気がして止まないのですが。
「あのさ、」
隣の彼がそっとこちらに振り向いた。たまたまその時、横顔を見つめていたアタシと瞳がバチッと遇い、把握していたよりも距離が近く、その間隔およそ15㎝ほど。
星が入ったビンを空に落としてしまったような綺麗な星空の下、刹那だけアタシ達の時が停止していまったようで、次の瞬間にはボッと頬を赤らめてしまった。
本当はすぐにでも目を背けて、ついでに背中まで向けてしまいたいっていうのに、どうしたのアタシ。

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