シンデレラの王子は。

「-----バーカ」
片手で瞳を覆われた。彼の片手の温度は熱かった。もしかしたら、アタシの顔面が熱かっただけかもしれないけど。
「俺様の顔をじっと見てんじゃねぇ」
目の前が見えた時には、彼はもうこちらを向いてはいなかった。
「じっ、じっとなんか見てないし!!そっちが見てきたんでしょっ」
「-----俺はっ…」
「なによ」
「なんもねぇし」
なんだかお互いどぎまぎしてて、彼はジュースの缶をベンチに放置し、ボールをつきながらゴール前へ。
シュート。
『ガコンッ』
「あ゙ーっ、ほらっ」
アタシに身振り手振りで訴えてくる。
「ほらって言われても…」
「-----お前って、本当にアレだよな。」
話が見えてこない。
「今日俺、もう入る気しねぇから帰る」
「うん」
ベンチに置きっぱなしのエナメルバッグを肩に掛け、ミカンジュースを片手に
「これ、サンキューな」
「また明日」
「また明日」
そう言って、少しだけ焦ったように帰っていった。
“また明日”だって。アタシ、なに言ってんだか。


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