シンデレラの王子は。

出来てないよ。あの日は、ただ先生に『結婚するから忘れて』と言われただけの日。
何も言えなかった。負けた気がした。悔しくて悔しくて、何に対して悔しがっているのかは、自分でも解らなかったけれど多分、それで寂しさと苦しさを隠したかったのだと思う。
「今日は“おめでとう”って言いに行くんじゃなくて、“さよなら”ってちゃんと言いに行こうよ」
「空未はなんにも解ってないよ!!
好きで好きで仕方なくて、何をされても、拒絶されても、ただ側にいたくて、先生のこと考えるだけでこんなに泣けてきちゃうんだよ、忘れてって、忘れられるわけないじゃん…」
ガチャッとふいにドアが開いて、空未が入ってきた。アタシは写真まみれのベッドに座ったままで、ぐしゃぐしゃの顔を伝う涙を拭った。
温かい空未がアタシのことを包んでくれる。アタシの心を温かくしてくれる。呼吸が徐々に元に戻っていく。
「確かに羽海のこと、全部解ってあげられてなかった。ごめんね。」
なんて答えたらいいのか解らない。言葉が見つからないよ。
「寂しいトキは寂しいっていっていいんだよ。ずっと ずっと側にいるからさ、羽海が強がってるとこは見たくない。
近くにいる時くらい甘えていんだよ。」
「-----うん」
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