シンデレラの王子は。
空未が優しすぎて、さっき酷いこと言ったの取り消したい。
「アタシは、いろんな恋愛を経験してきたつもり。大好きな羽海が結城先生に縛られて、新しい恋探せなくて、一歩も踏み出せないのなんて嫌。羽海には後悔してほしくないの。
だから、さよならしよう?」
密着していたのが離れて、空未がアタシの顔を覗く。
「-----うん…行く。」
ニコッてしてくれたけど、空未の目からは一粒だけ滴が落ちた。何食わぬ顔でそれを拭う。
空未はアタシに“大好き”って“後悔してほしくない”って言ってくれた。アタシも空未と同じこと思ってるよ。空未がアタシのこと大事って思ってくれてることがすごく嬉しい。
ストレートに発せられた言葉は、どれも心にグッとくるものばかりだった。
しっかりと顔は洗った。着替えもメイクも済ませ、不安をいっぱい抱えて目的地へ向かう。
今日は午後から架嗄の決勝戦があるのに、こっちを選んでくれた空未の気持ちを理解出来たと思う。全てアタシのため。そう思うと、空未に申し訳なくて頭が上がらない。
ただ、急に言いたくなった。
「空未が親友でいてくれて、ホントによかった」
空未は振り向いて、シシッと笑った。